新潟地方裁判所 昭和55年(ワ)237号 判決 1983年6月29日
山形県最上郡<以下省略>
原告
X1
山形県飽海郡<以下省略>
原告
X2
新潟市<以下省略>
原告
X3
右三名訴訟代理人弁護士
中村周而
同
味岡申宰
新潟市<以下省略>
被告
Y
主文
一 被告は、原告X1に対し金七〇〇万円、原告X2に対し金一二六二万七〇〇〇円及び右各金員に対する昭和五四年一一月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告は、原告X3に対し金九六〇万三四九〇円及びこれに対する昭和五五年四月五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
三 訴訟費用は被告の負担とする。
四 この判決は、第一、二項に限り、仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
主文同旨
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 被告は、訴外A、同B及び同Cと共謀し、商品取引を営業目的とする会社を設立し、同社を通じて多数の顧客と金の先物取引契約を結び、顧客から売買予約金あるいは保証金の名目で金員を交付させ、これを架空の取引相場をでっち上げて損金に計上して騙取することを計画し、昭和五三年一〇月二四日新潟市<以下省略>に本店を置く富士貿易株式会社(以下、新潟富士貿易という)を、昭和五四年三月二三日山形市<以下省略>に本店を置く富士貿易株式会社(以下、山形富士貿易という)をそれぞれ設立した。
2 被告は、右訴外Aほか二名と共謀のうえ
(一) 昭和五四年七月二日山形県最上郡<以下省略>原告X1方において、前記山形富士貿易の従業員Dをして、同原告に対し、金の延べ板を見せながら「金を買っておくと銀行預金よりも有利である」、「金の延べ取引をすれば絶対にもうかる」などと甘言を用い、あたかも特定の金の先物取引市場が存在し、かつ右市場で相場が公正に形成され、右先物取引をすれば必ずや益金を計上することが出来るかのような虚偽の事実を申し向け、その旨同原告を誤信させて同原告が右山形富士貿易との間で金の先物取引をすることに同意させ、よって同原告から予約金の名目で別紙一覧表のとおり同月四日から同年一〇月四日までの間合計金七〇〇万円を交付させてこれを騙取し、もって同原告に対し右同額の損害を与え
(二) 昭和五四年四月二一日山形県飽海郡<以下省略>原告X2方において、前記山形富士貿易の従業員Eをして、同原告に対し、「金を買えば定期預金にするよりも有利だ」、「金取引によって利益を得ている人が沢山いる。金取引は絶対にもうかる」などと甘言を用い、更に前記(一)と同趣旨の虚偽の事実を申し向け、その旨同原告を誤信させて同原告が右山形富士貿易との間で金の先物取引をすることに同意させ、よって同原告から予約金の名目で、別紙一覧表のとおり同月二三日から同年八月二八日までの間合計金一二八六万五〇〇〇円を交付させてこれを騙取したが、後日合計金二三万八〇〇〇円を益金として返還したので、結局同原告に対して一二六二万七〇〇〇円の損害を与え
(三) 昭和五四年四月一七日新潟市<以下省略>の当時の原告X3方において、前記新潟富士貿易の従業員Fをして、同原告に対し、「金の先物取引をすると、値上りしているから絶対にもうかる。もうかった金で海外旅行に行こう」などと甘言を用い、更に前記(一)と同趣旨の虚偽の事実を申し向け、その旨同原告を誤信させて同原告が右新潟富士貿易との間で金の先物取引をすることに同意させ、よって同原告から別紙一覧表のとおり予約金の名目で同月一九日から同月二五日までの間合計金九〇〇万円を交付させたほか、損金が発生したと称して更に精算金の名目で同年五月一七日金七八万円を交付させてこれを騙取し、もって同原告に対し右同額の損害を与えた。
3 よって、被告に対し、原告X1は前記2の(一)の損害額合計金七〇〇万円、原告X2は前記2の(二)の損害額合計金一二六二万七〇〇〇円及び右各金員に対する本件不法行為の後である昭和五四年一一月一日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の、原告X3は前記2の(三)の損害額合計金九七八万円の内金九六〇万三四九〇円及びこれに対する本件不法行為の後である昭和五五年四月五日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因第1項の事実中、新潟富士貿易及び山形富士貿易の設立については認め、その余は否認する。
2 同第2項の(一)の事実中、原告X1主張の日に従業員Dが同原告方に赴いたこと、同原告がその主張の金員を山形富士貿易に交付したことは認め、その余は否認する。
3 同第2項の(二)の事実中、原告X2主張の日に従業員Eが同原告方に赴いたこと、同原告がその主張の金員を山形富士貿易に交付し、その後合計金二三万八〇〇〇円を益金として返還されたことは認め、その余は否認する。
4 同第2項の(三)の事実中、原告X3主張の日に従業員Fが同原告方に赴いたこと、同原告がその主張の金員を新潟富士貿易に交付したことは認め、その余は否認する。
第三証拠
本件記録中の書証目録、証人等目録記載のとおり
理由
一 請求原因第1項の事実中、新潟富士賀易及び山形富士貿易の設立について及び同第2項の(一)ないし(三)の各事実中、山形富士貿易の従業員D、同E及び新潟富士貿易の従業員Fが各原告主張の日に同原告方に赴いたこと、各原告が山形富士貿易あるいは新潟富士貿易に対しその主張の金員を交付したこと(但し、原告X2につき益金として金二三万八〇〇〇円が返還されたこと)はいずれも当事者間に争いがなく、その余の各事実については、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第二ないし第四号証、第二五ないし第三三号証、証人Bの証言により真正に成立したものと認められる甲第七号証、原告X3本人尋問の結果及び弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第九号証、第一〇、第一一号証の各一ないし三、第一二ないし第一五号証、原告X1本人尋問の結果及び弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一八号証、第一九号証の一ないし六、第二〇号証、原告X2本人尋問の結果及び弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第二一号証、第二二号証の一ないし一四、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第二三号証の一ないし四、証人Bの証言、原告X1、同X2及び同X3の各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によりこれを認めることができ、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
二 右の事実によれば、原告らの本訴各請求はいずれも理由があるから、これを認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 板垣千里)
<以下省略>